『世界の心イラン』
第4号─音楽特集号概要
本号は、イラン音楽特集号として編まれ、イランの伝統音楽から現代のポップミュージックまでを広くカバーしています。特に伝統音楽については、各楽器についての解説や地方音楽にまで言及し、日本語で記された資料として最も多くの情報を提供する一冊に仕上がっています。またQRコードを利用したサンプル動画紹介により、実際の音の触れる機会も提供しています。主な掲載内容を皆様にご紹介します。
『世界の心イラン』第4号─音楽特集号概要
発行:2021年3月
本号は、イラン音楽特集号として編まれ、イランの伝統音楽から現代のポップミュージックまでを広くカバーしています。特に伝統音楽については、各楽器についての解説や地方音楽にまで言及し、日本語で記された資料として最も多くの情報を提供する一冊に仕上がっています。またQRコードを利用したサンプル動画紹介により、実際の音の触れる機会も提供しています。主な掲載内容を皆様にご紹介します。
特集について
【イラン伝統楽器】
古代ペルシアからの伝統を引き継ぐイラン伝統音楽は、ダストガーフ(またはダストガー)dastgāhと呼ばれる旋法体系で構成されています。伝統楽器は弦楽器、管楽器、打楽器の三種類から構成されていますが、弦楽器の中で撥弦楽器は、九種類のバリエーションがあります。イランの伝統楽器の特徴としては、木と皮革が巧みに利用されていることが挙げられます。日本と比較して乾燥している地域が多いイランでは、皮革が振動を伝える有効な材料として利用されてきました。
バイオリンの原型となる擦弦楽器のキャマーンチェは、九世紀初頭の文献に言及されていることが確認されています。この楽器は、四弦の振動を伝える駒が皮革の上に設置されています。
最近日本のポップミュージックにも取り入れられている打弦楽器サントゥールは、ピアノの祖先とされていますが、古代ペルシアのレリーフに描かれています。クルミ材でできたこの楽器は、二本の細い木撥で四本一組の弦を叩いて演奏します。
管楽器は木材または葦(ネイ)製でノンリード、シングルリード、ダブルリードに分かれます。この内、伝統音楽で多用されるのはネイと呼ばれるノンリードの葦製縦笛です。素朴な音色を奏でるこの笛は、多くの愛好者がいます。
打楽器の内、伝統音楽で多用されるのはダフになります。ダフは直径60センチほどの丸い木枠に皮革(今日では人工皮革)を張ったタンバリンのような楽器で、木枠の内側に三連の金属リングがいくつもついているのが特徴です。
【地方音楽】
多民族国家イランには、イラン系、トルコ系、アラブ系をはじめとする様々な民族が居住し、各地に民族固有の音楽や伝統的な舞踏など存在します。この内、日常生活と音楽が密接な関係にあるクルドの民族音楽は、世界的にも知られています。本号では15ヶ所の地方民族音楽をQRコード付きで紹介しています。
【音楽家の紹介】
本号では、イラン古典音楽の巨匠14名、ポップアーティスト10名のビデオクリップをQRコード付きで紹介しています。
連載記事について
【コルデスターン州】
今回ご紹介します州は、音楽の都と謳われるサナンダジ市があるコルデスターン州です。同市の国際ダフ音楽祭は、例年数千人が参加する一大イベントです。この他、この州の自然や産業、観光名所について言及されています。古代遺跡のキャラフトゥー洞窟では、先史時代からサーサーン朝の遺物が発見されています。
【イスラームを知る】
今回は、礼拝を呼びかけるアザーンについて説明になります。イランで最も有名なラヒーム・モアッゼンザーデ・アルダビーリーの荘厳なアザーンを試聴できます。
【エッセイ】
「日本人のイラン滞在記」では、イランに音楽留学された浜松市楽器博物館学芸員の石井紗和子さんの留学体験記を掲載しています。石井さんは、2018年に芸大院時代にペルシア語と音楽を学ぶためにイランに留学され、11ヶ月間滞在しました。弦楽器セタールのレッスンでは、楽譜に頼らずペルシア語の詩のことばやリズムを身体で覚えることが鍵になると述べています。
この他「イランの偉人」「イランの味」「伝統工芸品としてのダフ」「日本のサントゥール奏者、谷正人氏」の紹介記事やペルシア語音楽関係参考文献案内、イラン文化センターのこれまでの活動内容の概要も掲載されています。
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